介護施設のBCP(業務継続計画)|義務化されるBCPを「使える」ものにするためには - ファクタリング

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介護施設のBCP(業務継続計画)|義務化されるBCPを「使える」ものにするためには

災害イメージ

介護保険事業者は2021年4月よりBCPの策定が義務付けられました。
3年間の経過措置が設けられており、完全義務化は2024年4月からになります。
介護施設や障害施設の中には、BCPをすでに策定されている施設も多いのではないでしょうか。
保育施設は2023年4月から防災計画書の策定が義務化され、BCP策定は努力義務となりました。
近い将来、すべての福祉施設でBCPの策定が義務化されることが予想されますので、「使えるBCP」を策定するために気を付けるポイントに着目しながら策定方法についてご紹介します。

〔この記事でわかること〕
1.BCP(事業継続計画)の意味
  ・BCPとは?
  ・介護保険事業にとってのBCPとは?
2.意味がない?BCPがなぜ必要なのか
3.BCPで何を決めておく必要があるのか
4.BCP策定で最も重要なこと

BCP(事業継続計画)の意味

【BCPとは?】

BCPという言葉を知っていますか?日本語では事業継続計画と呼ばれています。
日本でも2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけによく耳にするようになりました。BCPとはBusiness Continuity Plan の略で、災害(自然災害に限らない)発生時に、重要な事業(業務)を継続させるためにあらかじめ準備しておく計画のことをいいます。

よく似た概念に防災計画がありますが、防災計画が主に人的・物理的ダメージを軽減することを目的として策定するものであるのに対し、BCPはむしろ事業(業務)そのものへのダメージの軽減を目的とする点が異なります。事業へのダメージを最小限に抑えるために策定するので、自身の業務だけでなく、委託先、調達先、供給先等も対象となります。

【介護保険事業にとってのBCPとは?】

では介護保険事業にとってのBCPとはどのようなものなのでしょう?
介護保険サービスの提供を受けている人の中には、サービス提供の中断が生命の危機に直結する方々もいます。電気や水道、ガスがすべて止まっても、例えば特別養護老人ホームでは介護を中断することはできません。

またサービス提供するのはヒトですから、モノだけあっても仕方ありません。どんなに非常食をたくさん備蓄していても、食事介助をするヒトがいなければサービスを提供できません。ポータブルトイレがあっても、排泄介助をするヒトがいなければサービスの提供はできないのです。

ですから、介護保険事業に求められることは重要なサービスの提供を中断しないこと、またやむを得ず中断してしまった場合にはできる限り早期に復旧させることです。そのためのBCP策定が必要不可欠となります。

意味がない?BCPがなぜ必要なのか

介護施設には中断できない重要業務が数多く存在します。その業務に従事できるのはだれなのかを事前に考えておく必要があります。
緊急時、すべての職員が職場に集まれるとは限りません。大規模な自然災害の場合は公共の交通機関がダウンし、主な幹線道路は、緊急車両以外は通行止めとなるでしょう。徒歩と自転車しか通勤手段がなくなると考えてください。

介護保険施設を訪問すると、緊急時の出社基準を定めた参集基準というものをよく目にします。災害のレベルに応じた職員体制を確保するための基準なのですが、徒歩によった場合の出社に要する時間はもちろん、近くに河川がある場合には橋が崩落しても出社できる職員はだれか、または施設に連泊できる職員はだれか、などさまざまな条件をもとに綿密に作成されています。

もう一つ、緊急時に参集を義務付けるか否かを判断する重要な要件として、職員の家庭環境があります。これは職員の個人情報と深く関わるため慎重な取扱いが必要です。例えば同居する家族に要介護者、未就学児などの要保護者がいる場合などは、緊急時に参集を義務づけることは難しいでしょう。

このように、緊急事態に備え、あらゆる方向からBCPの策定に必要なことを盛り込むことで、実際の場面でも重要な業務から優先して取り組めるのではないでしょうか。

BCPで何を決めておく必要があるのか

では具体的に、BCPでは何を決めておけばよいのでしょう?
まず行うことは、業務の優先順位を決めることです。普段おこなっている業務はみな必要なものばかりですが、それでも「これは絶対にしなくてはならない」業務を優先度の高い順に並べます。

従事できるヒトの数が減れば優先度の高い業務だけを実施すると決めておきます。「何をやるか」を決めることは、「何をやらないか」を決めることでもあります。この考え方は毎日の業務の中にも取り入れることができます。

例えば急に欠勤者が出た、午後から2人減ることになった、などの状況変化が生じれば、この変化に対応して業務分担を急いで検討することになりますが、業務の優先順位をあらかじめ決定しておき職員に周知しておけば決定と実行がスムーズに行えるでしょう。
日々の状況変化に柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。

BCP策定で最も重要なこと

このようにさまざまな条件を考慮しながらBCPを作り上げていきますが、作って終わりではありません。日々の避難訓練などの際にBCPの一部を適用してみましょう。きっと、うまくいかない箇所が出てきます。うまくいかなかった箇所は、うまくいくようにBCPを変更すればよいのです。

そうやってブラッシュアップを繰り返して、「使えるBCP」にしていきましょう。その際に、文書としてどんどん分厚いものになっていかないように注意してください。ブラッシュアップしていくほど文書としてはスリムになっていくのが理想です。

文書もマニュアルも、コンパクトであればあるほど使えます。いざ災害が発生した時に文書やマニュアルを読んでいる時間はありません。緊急時にまず行動すべきことはA4サイズ1枚にまとめ、小さくたたんで名札入れに入れておきましょう。

BCPは職員全員が同じ認識を持っていないとうまく機能しません。日ごろから全員で意識して、日常業務に組み込んで繰り返し実践し、「使えるBCP」の完成を目指しましょう。

伊東 理プロフィール写真
ライタープロフィール

伊東 理(いとう ただし)
辻・本郷 税理士法人 社会福祉法人部 シニアコンサルタント

2021年辻・本郷 税理士法人社会福祉法人部に入社。20年以上社会福祉法人会計に携わっており、措置費から介護保険に移行した2000年会計基準への移行支援以降、多数の種別において会計指導を担当している。
また、2008年から東京都、千葉県、埼玉県内における福祉サービス第三者評価事業にも従事しており、介護保険施設・障害施設・児童施設の福祉現場で評価を実施している。

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