訪問介護事業の開業でおさえておきたいポイント - ファクタリング

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訪問介護事業の開業でおさえておきたいポイント

介護士と利用者

新たに訪問介護事業をはじめようとしたときに、まず大前提として、法人格を有していることが条件となります。
社会福祉法人に限らず、株式会社やNPOでもよいです。
そのうえで知っておきたいポイントが大きく2つあります。
それは、

①利用者をどのように見つけるのか?
②職員となる人材に求められるものはなに?

です。

開業にあたり、まず知っておきたいこと

利用者をどのように見つけるのか?

訪問介護の利用者は、在宅で訪問介護員の訪問サービスを受けながら生活します。主に生活支援と身体介護があります。比較的独居の方が多いですが、家族と同居している場合でも一定の条件下で訪問介護サービスを利用することができます。
では利用者は、どこにいるのでしょうか。

通所介護の場合は利用者が通うため送迎車が迎えにきますので、どの住宅に利用者がお住まいなのかすぐわかります。しかし訪問介護は利用者の自宅でサービスを提供しますので、どの住宅に介護が必要な方がいるのかわかりません。いくら住宅地を巡回しても、介護を必要としているのに現在訪問介護サービスを受けられていない方を探し出すことはできません。

ではそもそも介護が必要になったら、どうすれば訪問介護サービスを受けられるようになるのでしょうか。
まず市区町村に要介護認定の申請を行います。これは原則として本人が行いますが、家族が代理人として行うこともできます。その後、介護認定通知が本人に届きます。介護認定通知が届いたら、地域の居宅介護支援事業所でケアマネジャーの選任をします。

選任されたケアマネジャーが自宅を訪問し、利用希望者にヒアリングをしながらケアプラン(計画)を策定します。ケアマネジャーが本人の希望に合った訪問介護事業所を紹介し、事業所と利用希望者との直接契約により訪問介護サービスを受けられるようになります。訪問介護事業者が利用希望者を探すには、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに紹介してもらうことが近道といえそうです。

職員となる人材に求められるものはなに?

訪問介護員に何が求められるのでしょう。まず資格としては介護職員初任者研修修了者以上であることが求められます。もちろんこの上級資格である介護職員実務者研修修了者、介護福祉士の資格があればなおよいでしょう。

しかし、一番に求められるものは、高い倫理観です。
訪問介護の一番の特徴は、利用者の自宅でサービスを提供することです。そこは通常密室となり、サービスを受ける側と提供する側の1対1の時間が長く続きます。そこは見てはいけないもの、触れてはいけないものばかりです。食べかけの食事、脱ぎっぱなしの服はもちろんのこと、通帳や印鑑も机の上に出しっぱなしかもしれません。訪問介護員はそうした環境の中でサービスを提供し続けるのです。

しかも訪問介護員には、やってはいけないことが数多く定められています。やっていいのは「本人を対象とした、日常生活を送るために必要な援助」とされていますので、逆に言うとこれ以外のことはやってはいけないということです。たとえは生活支援の場面で、「日常生活に必要な食料品などの近隣への買い物」はOKですが、タバコなどの嗜好品を買いに行くことや、遠方への買い物はできないことになっています。

また利用者がいる居室の掃除や利用者本人の服の洗濯はOKですが、居室以外の掃除や、同居する家族の服の洗濯はやってはいけないことになっています。このように細かな決まりの中でサービスを提供するのが訪問介護員です。高度な守秘義務意識をはじめとする高い倫理観を有する人材が求められています。

開業までの検討事項

上記をふまえた上で、検討事項を時系列で表示すると以下のようになるでしょう。

  • ①指定申請の準備人員基準、運営基準、設備基準のそれぞれに基準を満たす必要があります。
  • ②指定前の事前研修地域によっては新規指定申請者を対象に研修を行うところもあります。
  • ③物件契約車や自転車を置くことができることが物件の条件のひとつとなるでしょう。
  • ④内装工事相談室と事務室は分ける必要がありますので内装工事が必要になる場合があります。
  • ⑤備品の購入またはリース契約
  • ⑥指定申請

開業時に必要な条件、資格、認可、設置基準のチェック

介護保険事業者としての指定をとることが一番です。職員が所定の人員配置基準を満たしているか、出来上がった事業所は設備についての基準を満たしているか、などをチェックします。配置すべき人員には資格要件がありますので、人員が必要な資格を保有しているかのチェックも必要です。

開業前後の必要資金の目安と資金計画

訪問介護事業所は、サービスを提供した翌々月に国保連から対価を受け取ります。つまり、4月に提供したサービスの対価が国保連から入金されるのは6月になってからです。その間も人件費をはじめ各種経費の支出は待ってくれないので、開業時の運転資金として介護報酬の3ヶ月分が最低限必要だということになります。

人件費、家賃、車両の維持費(駐車場や駐輪場を別途借りる場合にはその料金も)は、利用者が少ない時でも必ず発生しますので、ゆとりのある資金計画が必要です。

事業所の課題

実際に訪問介護事業所の利用者を対象にアンケート調査を実施した事例から、訪問介護事業者に対する不安や不満を尋ねてみると、上位は以下のようになりました(出典:とうきょう福祉ナビゲーション)。

  • 1位 プライバシーへの配慮
  • 2位 要望への対応
  • 3位 情報提供や相談・助言の少なさ
  • 4位 訪問介護員の交代への不安
  • 5位 病気や怪我への対応

言葉遣いやサービスの提供そのものへの不安や不満は意外にも少なく、やはりプライバシーへの配慮が一番の課題といえそうです。高度な倫理観が醸成できるよう、職員のトレーニングが必要です。

他の訪問介護事業所との差別化

既に多くの訪問介護事業所がサービスを提供しています。そこに新規で参入し、一定のシェアを獲得するためには既存事業所との差別化を図る必要があります。まず、利用希望者とつながるための方法を考えましょう。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーはもちろんですが、直接利用希望者が問い合わせできる窓口を用意してはどうでしょうか。事業所のホームページを作り、直接事業所に問い合わせできるフォームを作る、SNSなどを活用して自事業所を紹介するなど工夫します。強みが発信できればさらに良いでしょう。

また事業所内でも工夫が必要です。現在はICT化が進んでおり、紙面による記録は少なくなってきています。利用者の情報の管理、アセスメント記録、ケアプラン、提供したサービス内容、さらに介護報酬の請求までがひとつのパッケージになった介護ソフトが多くあります。ソフトを使えば記録の転記も不要ですし、記録に要する時間も短縮できます。また何といっても他の訪問介護員との情報共有が瞬時に可能となります。

これらをタブレットに入れて訪問介護員に所持させれば業務の劇的な効率化が図れるでしょう。もちろん厳重なセキュリティを構築し、管理レベルを最大まで高めておく必要があります。ソフトの使用頻度の低い事業所では、記録用紙の紛失や、申し送り時の情報漏洩などのリスクが避けられず、信用問題となった事業所もあります。

待っていても利用者は獲得できません。情報発信を積極的におこない、高度なセキュリティと訓練のもとでICT化を推進して差別化を図りましょう。

伊東 理プロフィール写真
ライタープロフィール

伊東 理(いとう ただし)
辻・本郷 税理士法人 社会福祉法人部 シニアコンサルタント

2021年辻・本郷 税理士法人社会福祉法人部に入社。20年以上社会福祉法人会計に携わっており、措置費から介護保険に移行した2000年会計基準への移行支援以降、多数の種別において会計指導を担当している。
また、2008年から東京都、千葉県、埼玉県内における福祉サービス第三者評価事業にも従事しており、介護保険施設・障害施設・児童施設の福祉現場で評価を実施している。

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