通所介護の開業でおさえておきたいポイント - ファクタリング

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通所介護の開業でおさえておきたいポイント

介護施設で話す様子

新たに通所介護事業をはじめようとしたときに、まず大前提として、法人格を有していることが条件となります。そのうえで検討しなければならないことが2つあります。
それは、

①利用者はいるのか
②職員は揃うのか

です。
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

開業にあたり、まず検討すべきこと

①利用者がいるか

ひとくちに通所介護といっても、大きく分けて次の3種類があります。

種類法律根拠対象者定員人員配置基準その他の基準
通所介護老人福祉法第5条の2第32 項または第20条の2の2 介護保険法第8条第7項要介護1-519人以上管理者1、相談員1、看護職員または介護職員2以上、機能訓練指導員1介護職員は(利用者数-15)/5+1で配置
例:
利用者20名→介護職員2
利用者30名→介護職員4
機能訓練室+食堂で合わせて利用者1人あたり3㎡以上
相談室
浴室(任意)
静養室
事務室
トイレ
地域密着型
通所介護
老人福祉法第5条の2第32 項または第20条の2の2 介護保険法第8条第17項要介護1-519人未満管理者1、相談員1、看護職員または介護 職員利用者15人まで1・16人以上は 2、機能訓練指導員1 介護職員は(利用者数-15)/5+1で配置
例:
利用者20名→介護職員2
利用者30名→介護職員4
認知症対応型
通所介護
老人福祉法第5条の2第32 項または第20条の2の2 介護保険法第8条第18項要支援1.2
要介護1-5
1単位あたり
12人以下
管理者1、相談員1、看護職員または介護 職員1単位あたり2以上、機能訓練指導 員1
※介護予防事業は2017年より介護予防・日常生活支援総合事業に移行※機能訓練指導員とは、理学療法士・作 業療法士・言語聴覚士・看護師または准 看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ 指圧師を指す

それぞれ少しずつですが対象者、人数、職員配置などが違います。まず、どのような通所介護サービスをどの程度の規模で行うのかを決める必要があります。

では利用者は、どこにでもいるのでしょうか。

既に多くの通所介護事業所が存在していますが、中には休止・廃止する事業所や事業規模を縮小する事業所もあります。特に新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きく、利用者が通所しなくなったため事業が立ちいかなくなり、閉鎖した事業所もあります。通所できる利用者を見つけることは簡単ではありません。

なぜ利用者を見つけるのは難しいのでしょう。

通所介護事業とは、通所できるくらい元気な高齢者を対象とした事業ということができます。その方の状態(要介護度)が進めば施設に入所したり、訪問介護等他の在宅サービスに移行してしまいます。「デイサービスにおけるサービス提供実態に関する報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」によると、通所介護の平均利用年数は3年未満が6割を大きく超え、5年以上利用する高齢者は16.7%しかいないとされています。つまり6人のうち5人は5年以内に入れ替わり、常に新たな利用者をみつけなければなりません。

もうひとつの問題は、どこで事業を行うかです。

通所介護事業所は既に多く存在し、どのエリアで実施するにしても他のデイサービス事業所があることでしょう。競合するエリアに、既にどのくらいの他のデイサービスがあるかを調査する必要があります。

競合エリアに既にある通所介護事業所の特色も把握します。食事サービスの提供や入浴サービス提供の有無、リハビリに力を入れているなど、エリアのニーズと併せて把握する必要があります。

そして規模を検討します。小規模でやるのか、または認知症対応型とするのかなど、競合エリアとなる地域のニーズとサービスの提供量を調査し、決定しなければなりません。

②職員は揃うのか

エリアや規模、特色などについて決定したら、職員を確保しなければなりません。以前から介護職員を確保することは難しいといわれています。しかし調べてみると、介護職員の離職が他の業種と比較して特に高いわけではなく、全業種平均とほぼ同じです。

ではなぜ人が集まらないといわれているのでしょう。それは給料が安く、体力的にハードな職種と思われているからです。給料水準は確かに高いとはいえませんが、体力的にハードかというと、特別養護老人ホームなど身体介護が業務の中心であればハードといえますが、通所介護の場合、身体介護はそれほどハードとはいえません。そこには多少の誤解もありそうです。通所介護の場合、求められるスキルの第1はコミュニケーションスキルです。

利用者は日中の数時間を通所介護事業所で過ごします。そこでは職員や他の利用者との関わりを通して、穏やかな時間を過ごせなければなりません。資格は特に問われないことが多いですが、大切なのは利用者が気持ちよく過ごせる時間を提供できるかです。なお通所介護事業所は送迎がありますので、普通自動車免許は必要となる場合が多いです。

開業までの検討事項

上記ポイントをふまえた上で、検討事項を時系列で表示すると以下のようになります。

①サービス内容と規模の決定

内容と規模、特色も決めておきます。

②自治体への事前申請

自治体に事前申請を行い、当該エリアのニーズなども協議します。

③物件契約

送迎車を置くことができることが物件の条件のひとつとなるでしょう。

④内装工事

通所介護事業所には設備の基準がありますので、内装工事の際には自治体の立会が望ましいです。

⑤備品の購入またはリース契約

⑥新規指定前研修(東京都の場合)

東京都の場合には指定申請の前に研修を受講することとされています。

⑦指定申請

開業時に必要な条件、資格、認可、設置基準

介護保険事業者としての指定をとることが一番です。職員が所定の人員配置基準を満たしているか出来上がった事業所は設備についての面積基準等を満たしているか、などをチェックします。
設備に関しては、完成してから直すのは大変ですから、詳細な図面を準備して事前に自治体と十分打ち合わせをすることが必要です。

開業前後の必要資金の目安

通所介護事業所は、サービスを提供した翌々月に国保連から対価を受け取ります。つまり、4月に提供したサービスの対価が国保連から入金されるのは6月になってからです。
その間も人件費をはじめ各種経費の支出は待ってくれませんから、開業時の運転資金として介護報酬の3ヶ月分が必要だということになります。
人件費、家賃、送迎車両の維持費(駐車場を別途借りる場合にはその料金も)は、利用者が少ない時でも必ず発生しますから、ゆとりのある資金計画が必要です。

利用者獲得のために

何か特色を持たせることが有効です。「うちのデイは〇〇が特色だ」といえるものを作ることです。
それは機能訓練でもよいし、特徴的なレクリエーション活動でもよいと思います。
また入浴設備が広くてきれい、食事がとてもおいしいでもよいと思います。

特色を持たせたら、エリアの潜在的利用者に知ってもらわなければなりません。積極的に見学の受け入れを行い、事業所の認知度を高めていきます。

職員との関わりをセールスポイントとする場合には、介護福祉士の有資格者が多くいることや、機能訓練指導員を基準配置を超えて置いている、などがポイントとなるでしょう。
また通所介護事業所にとって送迎の重要度は高く、安心して任せられる運転が上手なドライバーを確保していることもポイントになります。

他の利用者との関わりも重要です。よく耳にするのは、「同じ趣味の利用者がいないからつまらない」、「話のあう友達がいない」などです。
先日、ある通所介護事業所にお邪魔しましたら、「将棋を指せる人がいなくてつまらないから、事業所を替える。」と仰る利用者がいました。
これらのニーズは事業を開始した後の個別ニーズですが、これらにも丁寧に対応していく必要があります。

伊東 理プロフィール写真
ライタープロフィール

伊東 理(いとう ただし)
辻・本郷 税理士法人 社会福祉法人部 シニアコンサルタント

2021年辻・本郷 税理士法人社会福祉法人部に入社。20年以上社会福祉法人会計に携わっており、措置費から介護保険に移行した2000年会計基準への移行支援以降、多数の種別において会計指導を担当している。
また、2008年から東京都、千葉県、埼玉県内における福祉サービス第三者評価事業にも従事しており、介護保険施設・障害施設・児童施設の福祉現場で評価を実施している。

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